写真はCDだけど,もともとはエラートレーベルのLP,高校時代の思い出深いディスクである。
それこそ「磨り切れる」ほど聴いた。
フォーレはそれまで聴いたどんな音楽とも違うので,最初は何だか複雑で取っつきにくいように感じたものである。
それでも第1番のソナタは,開始早々の優美なメロディーに引き込まれ,変化に富んだ和声を追ううちに,曲の魅力に取り憑かれてしまった。形式的にもロマン派のほかのソナタと共通する流れで,ついて行きやすかったこともある。
そのピアノ伴奏が一筋縄ではいかず,バスの動きに翻弄され始めるとどこに行き着くのか分からなくなるスリルもあった。
さて,ディスク裏面の第2番になると,これはフォーレ晩年独特の激しい情念が込められた,やや近づき難い作品だった。
それでも何度か聴いているうちに,フランス音楽にしては動機を組み合わせて積み重ねる構成感があり,そこに品位あるメロディーがからんでストイックな内面のドラマが展開される清新な音楽に,だんだんと心引かれた。
フォーレの音楽には,バロック以来の通奏低音の躍動があり,ドイツロマン派的な息の長いメロディーと和声の緻密な構成もある。
音楽表現としても,一定の規模をもつソナタに盛り込まれるべき精神的ドラマの広がりと深さを,そのまましっかりと描ききっていることを忘れてはならない。
明日(11日)は,フォーレ協会主催でジェラール・プーレ(Vn)さんと協会会員のPf伴奏によるフォーレのソナタ1・2番とドビュッシーのソナタの演奏会(スタインウェイサロン東京松尾ホール)に朝から出かけることになっている。
それで今日の日曜日,この懐かしいCDを通して聴いて予習したわけだった。